私は学生時代、京都に住んでいました。
毎日の食事はスーパーに買い出しに出ていたのですが、ある日、
いつものスーパーのお惣菜コーナーで、ちょっとビックリするお惣菜を見つけました。
京都では当たり前のもののようですが、都人でない私にとっては、静かな驚きでしたね…。
スーパーマーケット散策のすすめ
毎日のように通っているスーパーだったのですが、
見つけたのはその日が初めてでした。
新商品として売り出しを始めたのか、
それとも私がそれまで気がつかなかっただけなのか。
地味なものではあるんですよ。
買い物客の目を引くような華は決してないし、
正直、「買って帰りたい!」という気持ちを起こさせるような見てくれでもない(笑)
10センチ四方くらいのトレーに入って、ラップがかかっています。
スーパーのお惣菜として当たり前の包装です。
丸い野菜が薄切りになって何切れか入っています。
よく見ると、どうも大根のようです。
さらによく見ると、タクアンなんですね。
普通のタクアン漬けというのは、黄色いものです。
が、このパックに入ったモノは、もっと色あせた感じでした。
色あせたというか、茶色がかったというか。
で、もう一つ普通のタクアンと違ったのは、
いやにしなびた感じのあったことです。
シワっシワなのです。
そもそもタクアンは、そんなに張りのある食べ物ではありません。
が、これはさらにヘタってるというか、とにかくシワシワでした。
まあ見てくれの悪い食べ物というのは数あります。
そういうものほど、意外と美味しかったりもします。
いわゆる「名古屋メシ」なんていうのは、
ことごとく茶色い食べ物ばっかりですしね。
が、私が驚いたのはその外見ではなく、
その外見を持ったものに付けられた名前でした。
茶色でシワシワの、見るからに貧相なおかず。
そこに付けられたラベルには、
「ぜいたく煮」
と書かれていました。
なるほど、タクアンを煮てあるわけです。
よく見ると、削り節のヨレヨレになったようなやつもくっついてます。
知らない人なら、これは10人中9人以上の心の中で、
一言一句ちがわない言葉が浮かぶでしょう。
私もそうでした。
どこがゼイタクやねん…
当時行きつけだった河原町のバーがあったのですが、
そこのマスターは根っからの京都人。
この食べ物は何か?
どこがゼイタクなのか?
聞いてみました。
「京都のお惣菜」だそうで、マスターよくご存知でしたね。
ぜいたく煮のゼイタクさ、その理由が即答で返ってきました。
「そのままでも食べられるタクアンを、わざわざ煮てあるからや」
そのわざわざの手間が、ゼイタクなのですね。
理屈の通った話で納得しながら、
「いかにも京都らしいなあ」と思ってしまいました。
私、観光旅行先で時間があれば、
必ずスーパーマーケットの食品売り場をのぞきます。
イオンとかヨーカドーとかでなく、
できるだけ地元ブランドのチェーン店を選んで。
うまくいくと、結構おもしろいものが見つかります。
地元の人はそれを「当たり前」と思い込んでいるので、
なおのこと興味深いんですね。
空いた時間があれば、ですが、
スーパーは観光にもオススメですよ。
(参考)
ぜいたく煮、こういうものです:
グーグル画像検索「ぜいたく煮」