ピサヌロークへ行こうと思ったのは他でもない、
「空飛ぶ野菜炒め」を見に行くためでした。
ここでいう「野菜」とは、空心菜のこと。
名前のとおり茎がストローみたいに空洞になっています。
調理法はたいてい、ニンニクと唐辛子で炒めるだけ。
1分かからない料理です。
それがどうしてこんなにおいしいの?っていう。
東南アジア全般で、超ポピュラーな料理です。
あるとき、「その青菜炒めが空を飛ぶ」という情報をキャッチしました。
これを聞いては捨て置けません。
バンコクから北へ約300キロ。
5時間ほど列車に揺られて乗り込みました。
野菜炒めは本当に空を飛んだ
青菜炒めとはスピーディーな料理です。
強火でジャッと炒めて、熱いところをすぐ客に出すところが醍醐味です。
冷めてしまったら、油っこさが際立ってしまう。
ところがピサヌロークでは、ここがちがうんですねー。
炒め上がったアツアツの青菜を、フライパンから皿へ移す。
まあそれ自体は普通のことなんですが、その移し方が普通じゃない。
わざわざ少し離れたところで皿を構えているスタッフのところまで、
フライパンの中身を放り投げるんだそうな。
で、飛んできた青菜が見事キャッチされるという。
多少の味は損ねても、あえて放り投げるあたりが心意気です。
川沿いのレストランに、一軒、「空飛ぶ野菜炒め」と日本語で書かれた看板を出す店があります。
晩ごはん時に行ってみると、長いテーブルが出てて、そこに団体さんが、ズラーッと座っています。
で、その長テーブルの端には、デッカいトラックが停まってます。
車高の高さは見上げるほど。
そのトラックの上で、皿を構えて待ってる店員さんがいます。
調理係(つまり投げ役)はもちろん、トラックの上の高い所で炒めるわけではありません。
しっかと地に足をつけて炒めます。
そして、炒め上がったものから順に、トラックの上へ放り投げていくわけです。
その距離は10メートルほどありましたかね。
実際に目にするまでは、ほんの2~3メートル投げるだけかと思ってました。
ナメてました。
ヒュゥゥゥゥゥって飛びましたね。
飛行距離も飛行時間も長い。
で、受け役が見事キャッチしたら、団体さんが拍手喝采で盛り上がる。
よく見てると、受け損なってほとんど皿に収まらないときもあります。
でも、拍手喝采の音量は変わりません。
落としたら落としたでいいらしい(笑)
正直なところ、暗いし遠いし、実際は落とそうが受けようが、座ってる者からはよく見えない。
青菜が宙を舞い、適当なタイミングで盛り上げ役のスタッフが歓声を上げるから、
そこで「おお、受け取ったか」くらいに思って、お客さんが拍手をする、という流れですね。
で、せっかく目の前で炒め上がって、一旦わざわざ遠くへ飛んでいった青菜が、
テーブルまで運び戻されてきて、お客さんの前に出されます。
放り投げて、空中を舞っている間に、青菜の持つアツアツ加減は確実に失われます。
まあ、味的には、おいしくなくなる(笑)
でも、確かに飛びますからね、青菜が。
空を。
噂は本当でした。
ピサヌロークの隣の県は、世界遺産の遺跡があるスコータイ。
こちらは沢山の旅行者が行きます。
でも、ピサヌロークに来る旅行者は、
特に泊まっていくような旅行者は、
あんまりいないでしょうね。
何かキッカケがあればいいんです。
しょーもないものでも(笑)
タイってけっこう広い国なんで、
観光客のいく街は決まってます。
でもそのルートを少し外れると、
素朴でリアルなタイに出会えます。
野菜炒めが今も
空を飛び続けているかはわかりません。
でも、行ってみて、もしやってなくてもガッカリせずに。
それだけのために行くほどのイベントでもない(笑)
ピサヌロークの人たちはみんな、
愛想がよくてニコニコしていました。
■ピサヌローク(グーグルマップ)
■これまで私が滞在した街(グーグルマップ)