私はいつもできるだけセレンディピティに恵まれやすい環境に身をさらそうと思っています。
何しろ「予期せぬ幸せ」なので、基本は向こうまかせにならざるを得ないのですが、それでもこちら側で工夫できることもなくはない。
その工夫のひとつとして、私が普段から実践しているのが「ブックオフ・オンラインを使う」ことです。
要するに、「手当たり次第に古本を乱読していくと、そのうち思いもよらない掘り出し物にも当たる」という原始的な手法がベースではあります。
でも「オンライン」には、何といえばいいのか、その「思いもよらなさ」加減が増幅されるというか、良質のものに当たる確率が高くなるような仕組みや特徴がある。
ただの当てずっぽうよりは、一歩先を行くツールではないかなあと思うのです。
そういった仕組みや特徴、4点ほどについては、こちらでお話ししています🔽
3分半くらいのもんなんで、つづきを読む前にぜひ聴いてみてください:
Podcast 第8話
ブックオフオンラインで手に入る「予期せぬ収穫」
で、これをふまえて今日のお話では、4つめのポイントである「古本の中から出てくるもの」の実例を並べてみたいと思います。
セレンディピティというのは、予測できないことや偶然が前提になる話なので、言葉(理屈)で説明するのがなかなか難しい。
なので、具体的なケースをご覧いただいて、全体像を理解するというより、断片的でも何となくのイメージを感じとってもらえればなあと思います。
ブックオフ・オンラインで届いた本から出てきたもの
本にはしおりが付きものです。
ちゃんとしたしおりでなくても、手近にある適当な紙片を代わりに使うことはよくありますよね。
そういうものが挟まれたまま本が売りに出されてしまって、そのまま次の読み手(私)のところまで届いてしまう。
適当な、手近なものを使うだけに、前の持ち主の暮らしや性質をよく表すんです。
(1)どんな人なんだろう
これは上のトークの中でもふれてますが、
飲み物ふたつと、スイーツひとつ。
まあ二人で来てるんでしょうが、一人だけお腹空いてたのか、それとも一つのクレープを二人で分け合うくらいの間柄なんでしょうか。
レシートって、暮らし感がにじみ出ます。
見も知らない誰かの休日の過ごし方をうかがい知れるようで面白い。
ちなみにこのレシートだけを見るのでなく、それが発掘された本の内容を考えあわせると、さらに面白いです。
このエクセルシオールカフェ秋葉原ダイビル店のは、『なにもない旅 なにもしない旅』(雨宮処凛/2010)という本から出てきました。
これは変な本です。
こういう本は、フツーの人は読まない(笑)
(2)めちゃめちゃ共感する
『香港女子的裏グルメ』(池上千恵、小野寺光子/2008)という本から出てきたメモ。
私は旅行関係の本をよく買うので、特にガイドブックとかの中から、こういう「計画書」が出てくることがあります。
見知らぬ人の旅行企画を見せてもらう機会ってないので、とても面白い。
これは本が本なだけに、食べるのが好きな人ですね。
3食ギッチリ予定している。
私ももちろん食べるの好きです(だから同じ本を買っている)
だからめちゃめちゃわかります、この意気込み!
胃腸の健康を保って、この計画どおりの食事をこなされたことを心から願います。
(3)近所にいてたんやなあ
この病院は、私の濃厚な行動範囲内にあるので、よく知ってます。
前の持ち主は、ここの患者さんだったのですね。
ブックオフオンラインは、オンラインなだけに、たぶん日本全国から本が集まってきます。
遠くからもやってきます(まあ割合的には首都圏が圧倒的ですが)
でもその中から、ふっと濃い地元感を漂わせるものが出てくると、それはそれで感慨深いものです。
(4)いざなわれる
ポストカードというのも、割と出てくるアイテムです。
厚紙だからしおりに使いやすい。
このカードは『旅名人ブックス 広州・マカオ・広東省』(2005)から出てきたものです。
オールカラーのガイドブックなのですが、写真がふんだんに使われているだけでなく、歴史や文化的な記事もかなり書き込んであって、大人っぽい雰囲気の案内書です。
そんな本を読むのは、趣味的にも洗練された人なのかなあと推測されます。
きっとシュッとした人なんだろうなあ…という前の持ち主に親しみがわいたところで、これも縁なので、この谷六の画廊に足を運んでみるのも面白い。
私は洗練されてないので、画廊なんて普段ならまず行くはずのない場所なんですが、それだけに面白い。
(5)ご無事でおかえり
あってもおかしくないなあとずっと思ってたら、ついに出た、ボーディングパス。
『地球の歩き方 インド(’08〜’09)』より。
キャセイパシフィックの香港→成田便なので、帰り道ですね。
乗り継ぎ案内も一緒にはさまってたので、ここは素直にインド帰りと推定します。
時期的には夏休み。
ちょっと変わった苗字の方でしたが、インドでどんな体験を重ねてこられたでしょう。
まあ帰路便には乗ってはるので、少なくとも無事ではあったということで(祝)
(6)いろんな用事を持った人が海を渡る
こちら、『旅のグルメ タイ』(1991)より。
タイに関心を持っているからこそ読む本ですが、食べ物以外にも関心分野がおありのようです。
むしろこっちがメインなのか(笑)
バーンカピってやや郊外ですが、でっかいショッピングモールがあったりして、それがある意味バンコクっぽい、いい感じなところです。
あんまりない毛色のブツだったので、面白かったです。
(7)いざなわれる〜その2〜
同じく『旅のグルメ タイ』(1991)より。
こっちは日本の、やはり不動産系資料のかけらです。
たまたまなんでしょうが、たまたまだと思わない方が妄想が広がって楽しい(笑)
この地図の場所へは、ぜひ行ってみたいですね!
つげ義春の作品に、主人公が拾った巻物に描かれていた地図の場所に行ってみる話があります。
「地図だけが与えられる」っていうのは、何と思わせぶりな、人を突き動かす設定なんでしょう。
こんな縁でもなければ、私は死ぬまでこの場所に足を運ぶことがないかもしれない。
(8)現地でついた匂い?
この本、aruco っていうのは、地球の歩き方から出てる女性向きのシリーズです。
そのインド版を取り寄せてみました。
この本からは、残念ながら何も出てきませんでした。
が、わりとキャピキャピ感のある本にしては、開いてみた瞬間にモノ凄っごいタバコ臭がツーンと来て、そのことが異様におもしろかったです、個人的に。
決め手はこれをセレンディピティにつなげること
以上、これまで出会った主な「掘り出し物」を並べてみました。
これらが出てくることは、まったくの予想外です。
本自体は名指しで頼んで取り寄せていますが、その中に何がはさまれているかまでは、知るすべがまったくない。
とはいえ、確かに「予想外」ではあるけども、この予想外は、大した「幸せ」ではない(まったくない?笑)
つまり、紙片が飛び出してきたこの時点では、まだ「セレンディピティ」とは呼びにくいわけです。
肝心なのは、こうして得られた取っ掛かりに、後の展開をうまくぶら下げていく工夫を凝らすことです。
その工夫によって、単なる偶然が「幸せ」にも変わり得る。
本当のセレンディピティは、この先にあるのです。
でも、取っ掛かりさえつまんでしまえば、あとの工夫はわりと楽でしょう。
予想外の幸せを求めるとき、本当に難しいのはこの工夫ではなくて、最初の取っ掛かりをつかむことなのではないかと、私は思うんですよ。